さる秋の昼下がり、百名伽藍の紺碧の海。
その空に、一筋の白雲がたなびき、やがて優雅な龍の姿を描いた。
思えば、この館を建てる前、地元の巫女がこう告げた──
「ここは龍神の通り道。地鎮の儀に先立ち、龍神を讃える祈りを捧げなさい」と。
私達はその言葉を受け、その祭祀を執り行った。巫女は深く頷きこう言った。
「龍神はこの館を護り、栄えさせてくださるでしょう」。
その言葉を、半ば信じ、半ば夢のように聞いた。
一年後、再び訪れた巫女は、「龍神が喜び、舞い遊んでおられます」と微笑んだ。
それから更に10年余り、突如、目の前に現れた龍の雲は、忘れていたあの時の巫女の話を思い出させていた。
まさか、あの時の龍神が?
その不思議な高揚感に浸っているうちに、白い龍の姿はゆるやかにほどけ、秋の風に吹かれて消えていた。










