海岸と館の間をなぞるように続く防風林の中、ひときわ目を惹く樹木があります。
赤い実のなるガジュマルの意を持つアコウ(赤榕)です。
百名伽藍は、このアコウの巨木の前に部屋を設え、「赤榕の間」と名付けました。
この部屋から見るアコウは、海を背景に枝を奔放に広げ、思わず見入ってしまうほどの不思議な魅力を感じさせます。
時期が来るといっせいに葉を落とし、ほどなく燃えるような若葉を吹き出し実を結ぶ様は、
潔くも命に溢れています。
【赤榕の間】
そんなアコウを調べてみると、他の樹木にはない受粉の特徴を持っていることがわかります。
一般的には風や水、蝶や蜂、鳥など様々な自然によって花粉は運ばれ共に命をつないでいますが、
アコウはわずか1種類の小さな昆虫、アコウバチのみ。しかも、そのアコウバチを実の中に寄生させ育てるのだそうです。
成虫となり実から巣立つメスのアコウバチですが、その命もまたわずか数日…
限られた時間の中、花粉を運び新たな実に卵を産み付けるのです。
そんな過酷な共生からか、アコウは短い周期で実を付けます。
屋久島の西部では、常に全体の約3割のアコウが実を付け、全く実が無くなる時期がないのだとか。
まるで絶妙なコミュニケーションを図っているかのようで、アコウの神秘に興味は尽きません。
【アコウの実】
【アコウの木:百名伽藍 回廊より】